【帰化ガイド】帰化申請の7つの要件

ここでは帰化申請を行うための必要な要件について解説していきます。

目次に記載のあるとおり、帰化の要件は大きく分けると7つの要件に分けることができます。

一つ一つ詳しく確認していくことにしましょう。

1.住所要件 5年以上の日本での継続した居住歴

帰化申請を行うためには、日本での居住歴が要件の一つとなっています。

原則と例外がありますので、確認していきましょう。

原則:継続して5年以上日本に住所があること

帰化申請を行うためには、継続して5年以上、日本に住んでいる必要があります。

継続してというのがポイントで、今現在も含めて中断がない状態で、5年以上住んでいる必要があります。

では、どういった場合に中断すると判断されるのでしょうか?

海外への観光旅行で数週間の出国などは中断とは判断されることはありませんが、1年の半分以上を海外にいるような場合は、注意が必要となります。

たとえば、日本で4年間住んだ後、その後1年帰国し、また再来日したような場合、当初の4年間はリセットされてしまい、再来日後から5年経過するまでは申請できないということになってしまうこともあります。

ただし、海外留学や会社の辞令による長期の海外出張の場合など、ケースバイケースで判断されることになりますので、自分の場合は、申請が可能かどうか専門家などに確認してもいいでしょう。

例外:緩和要件

例外として、次のような場合に住所要件は緩和されています。

  1. 日本国民であった者の子で引き続き3年以上日本に住所または居所を有する方 ※養子は除きます。
  2. 日本で生まれて、引き続き3年以上日本に住所または居所を有するか、その父または母が日本で生まれた方※養父母は除きます。
  3. 引き続き10年以上日本に居所を有する方。
  4. 日本国民の配偶者である外国人の方で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する方
  5. 日本国民の配偶者である外国人の方で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する方
  6. 日本国民の子で日本に住所を有する方 ※養子は除きます。
  7. 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組のとき本国法により未青年であった方
  8. 日本の国籍を失った方で日本に住所を有する方
  9. 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者

法律の条文のままなので、少し難しいかもしれませんが、いくつかピックアップして例示していきましょう。

在留資格「特別永住者」をお持ちの在日韓国人の方などは、ほとんどの場合で②が適用され、3年以上の居住歴で申請要件を満たすことが可能となります。

日本人と結婚している外国人の方は、結婚して3年以上経っているか、日本に住んで3年以上で結婚して1年以上経っているような場合は、③④のどちらかに該当し、要件を満たすことになります。

両親のどちらかが日本人であるような場合は、日本に住所を定めた時点で、申請が可能となります。

その他のポイント

在留資格「留学」の場合

留学生として日本に住んでおられる方については、もともと在留資格「留学」の趣旨が日本の大学などで学んだあとに本国に帰国することを予定しているビザであるため、留学生として5年以上日本に住んでいたとしても、居住歴として認められません。

ただし、卒業後に日本で就職するような場合は状況が変わることになります。

  • 留学2年+就労ビザ3年以上で申請OK!!

留学生が卒業後、日本で就職をして就労ビザに変更したような場合、帰化申請の要件である5年の日本在留期間のうち、就労ビザとしての居住期間が3年を経過した時点で申請することができるようになります。

在留資格「家族滞在」の場合

在留資格「家族滞在」は、おおもととなる就労ビザなどに付随して日本に住むことができるビザであるため、その方単独での帰化申請を行うことができません。

ですが、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などの就労関係の在留資格をお持ちの配偶者と一緒であれば申請することが可能です。

となっていましたが、状況によっては、「家族滞在」単独での帰化申請も行うことができるようになっています。(2021年4月時点)

詳しくは今後まとめてホームページ上で掲載できればと思います。

2.能力要件 成人(20歳以上)していること

原則として、帰化申請を行うためには、年齢が20歳以上であり本国の法律上も成人である必要があります。

例外として、次のような場合はこの要件は緩和されています。

  1. 日本国民の配偶者である外国人の方で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する方
  2. 日本国民の配偶者である外国人の方で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する方
  3. 日本国民の子で日本に住所を有する方※養子は除きます。
  4. 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組のとき本国法により未青年であった方
  5. 日本の国籍を失った方で日本に住所を有する方
  6. 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者

居住要件の例外の部分とよく似ていますね。

両親ともに外国人の方で未成年の場合、この要件を満たすことができないため、通常通りですと未成年ひとりでの帰化申請をすることができません。

ですが、両親のどちらかが帰化申請をすれば、親の許可が下りた時点で上の表の③を満たすことになります。

本来であれば、親の帰化の許可が下りた時点で、あらためて未成年者の帰化申請を行うということになりますが、実務上は親が申請する場合は、同時に未成年者の子についても申請することができることとなっています。

民法改正による成人年齢の引き下げ(2022年4月1日施行)

 平成30年の第196回通常国会において、生年年齢の引き下げなどを内容とする「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号)が可決・成立しました。

令和4年(2022年)4月1日から施行されていますので、20歳以上となっている要件も同日から18歳以上に引き下げられています。

  1. 認知された子が国籍を取得することができる年齢(国籍法第3条第1項)
    現行の国籍法では20歳未満とされているところ,改正により18歳未満とされます。
  2. 国籍の再取得をすることができる年齢(国籍法第17条第1項)
    現行の国籍法では20歳未満とされているところ,改正により18歳未満とされます。
  3. 国籍の選択をすべき期限(国籍法第14条第1項)
    現行の国籍法では,重国籍となった時が20歳未満であるときは22歳に達するまで,重国籍となった時が20歳以上であるときは,その時から2年以内とされているところ,改正により,重国籍となった時が18歳未満であるときは20歳に達するまで,重国籍となった時が18歳以上であるときは,その時から2年以内とされます。
  4. 帰化をすることができる年齢(国籍法第5条第1項第2号)
    現行の国籍法では20歳以上とされているところ,改正により18歳以上とされます。

外部リンク
法務省ホームページ「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について

3.素行要件 素行が善良であること

帰化の要件の一つとして、素行が善良であることが要件となっています。

善良というと非常に高尚な生活を営む必要などがありそうですが、実際は通常の日本人と同じような生活をおくっていれば、特に問題はないでしょう。

ただし、過去の犯罪歴や税金の滞納(所得税や法人税、住民税など)、年金の未納、交通違反歴なども審査の対象となりますので、気になる点をいくつか例示することにしますね。

前科・犯罪歴

前科や犯罪歴は帰化を許可するかどうかの基準のひとつとなります。

犯罪歴の内容にもよりますが、5年~10年くらい前のことであり、反省もしているような場合には十分に許可が下りるものと思われます。

当事務所でもいくつか事例もあるのですが、ここでの記載はさすがに控えておきますね。

破産歴

破産を行うことになった理由にもよりますが、免責を受けてからおおよそ2年以上経っていれば、申請可能と判断されることが多いと思われます。

その他の債務整理については、特に申請できないなどとはなりませんが、申請時には正直に担当官に伝えることが必要です。

運転経歴

過去5年間の交通違反の有無について、審査に影響することとなります。

駐車違反やシートベルト違反などの軽度の違反が数回程度であれば問題ないのですが、軽度の違反であっても何度も繰り返している場合や酒気帯び運転などの免許停止処分を受けているような場合は審査に大きく影響することになります。

場合によっては、申請を数年待ったほうが良い場合などもあるでしょう。

納税の状況

会社員や個人事業主であれば所得税や住民税、会社経営者であれば法人税や消費税などについて、未納の部分があれば完納しておく必要があります。

また、会社経営者や個人事業主の場合、脱税などを行ってしまい重加算税などの処分を受けている場合、数年間は申請ができない場合もあります。

事業の経営

会社役員や個人事業主であるような場合、毎年の確定申告をおこない税金をしっかり払っていれば、収益に多少の赤字であったとしてもおおむね問題はありません。

ですが、あまりにも節税が過ぎる税務処理や累積赤字が大きい場合などには申請が難しい場合もあります。

年金の状況

年金については、現在の帰化申請の要件としては、申請前1年間に未納がない状態であることが申請の要件となっています。

ただしそれ以前の過去の未納分については、法律上さかのぼって納付することが可能な分を支払う意思があることを示す必要があります。

家族の素行について

親族やご家族に犯罪者がおられるような場合ですと、同一世帯で生計を一つにしているということになると審査に影響を与えます。

これは同一世帯ということになると犯罪で得た収入で生活している可能性を疑われることになってしまい、帰化申請を行うのに適切ではないと判断されるためです。

一方で刑務所などに拘留されているような場合やまったく別居しているような場合は、同一世帯でないと判断されれば十分に申請は可能だと思われます。

別世帯であり反社会的勢力との関りがないということであれば、帰化申請はあくまでも個人の申請であるため、本人の身分関係が本人の身分関係が重要視されるためです。

暴力団や反日活動について

申請者の経歴の中で過去に暴力団に在籍していたり反日活動などを行っていたとなってしまうと、やはり帰化申請には大きく影響してしまいます。

ですが、そういった過去の経歴から年数が経過していて、現在は更生して立派に生活しているようであれば、申請をお考えになってもよいかと思います。

当事務所でも過去に反社会的勢力に所属していた方の申請実績はあります。

10年以上前の経歴であり、本人は立派に更生されて生活しておられるという状況で許可が下りました。

その他、様々なケースについて、「帰化申請Q&A」でも紹介しています。

4.生計要件 通常の生活を営んでいること

生計要件としては、

  1. 税金や年金をしっかり納付している適正な収入
  2. 経済的に通常の生活が営むことができる金額

があれば問題ありません。

「貯金額がいくら以上必要か?」などの質問をよく受けることもありますが、しっかり生活ができていれば、貯金額が0円でも問題ありません。

適正な収入となっていますので、所得税や住民税、健康保険や年金などをしっかり納付したうえでの収入ということになります。

無申告の収入は適正な収入とはいえないので、注意が必要です。

ですが、多くの会社員の方は、給与が支払われる前に会社が控除していることも多いため、問題ないことが多いですが、会社経営者の方や個人事業主の方は特に注意されたほうがよいでしょう。

また、申請者自身が無職であっても、配偶者や父母の収入などで生活ができていれば、申請は可能です。

たとえば、夫に扶養されている専業主婦や仕送りを受けている子ども、子に扶養されている父母などについても、生計をひとつにしているご家族の収入合計で生計が成り立っていると判断されれば、申請は可能ということになります。

いっぽうで一人暮らしで無職の場合、銀行に預貯金がたくさんあったとしても、申請が難しい場合もあります。

身体に障害があって働くことができないなどの理由があれば別ですが、日本国憲法で勤労の義務が定められているため、理由もなく無職という状態での帰化申請は適正ではないと判断されるためです。

例外として、次のような場合はこの要件は緩和されています。

  1. 日本国民の子で日本に住所を有する方※養子は除きます。
  2. 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組のとき本国法により未青年であった方
  3. 日本の国籍を失った方で日本に住所を有する方
  4. 日本で生まれ、かつ、出生の時から濃く正規を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者

5.国籍要件 二重国籍の禁止

日本では二重国籍は認められていないため、帰化して日本国籍を取得すると母国の国籍は喪失することになります。

韓国などの多くの国では、自国民が他国へ帰化すると当然に自国での国籍は失われるということになっていますが、フィリピンやベトナムのように帰化の許可が下りた後に国籍離脱の手続きが必要となる国もあります。

また、中にはベルギー・ブラジル・インドのように未成年については国籍の喪失を認めない国もありますし、日本ではあまりないでしょうが、「難民」のように国籍の離脱手続自体ができない場合もあります。

二重国籍を認めている国の方が、帰化申請を行う場合には、本国の手続きなどがないため、帰化申請の受付時点で「国籍離脱・放棄宣誓書」という書類にサインすることになります。

この宣誓書は、日本国籍を取得した後に継続して二重国籍の状態であったとしても、あくまでも日本国籍であることを宣誓する書類となっています。

6.思想要件 日本国憲法の遵守

国籍法の帰化要件には、

  • 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと

と規定されています。

まず該当することはないと思いますが、テロ組織に加入していたりまたは過去に加わっていた人で、危険な思想を持っていると判断されるような場合は帰化することはできないということになります。

また、民族学校に通学していた学歴や在日本大韓民国民団で役員経験や勤務していたような過去がある場合にも、帰化が可能かどうかを気にされる方がおられます。

申請人自身が、現時点で勤務している場合などには申請が難しい場合もありますが、過去の経歴としてであれば申請は可能です。

帰化申請時の面接の際には経歴などについて詳しく質問はされることにはなりますが、これまでの当事務所の事例では問題なく許可が下りています。

7.日本語能力 読み書き・会話能力

特に国籍法の条文に規定されているわけではありませんが、「小学校3年生程度の読み書き」が一応の基準となっています。

その理由としては、帰化をして国籍が日本となると、当然日本人としての権利や義務が発生することになります。

選挙権など日本人の権利・義務を行使するためには、ある程度日本人と同程度の日本語の能力が必要となると判断されているためです。

日本語能力テスト

日本語能力をはかるテストは必ず実施されるというものではありません。

担当官が「今回の申請人については日本語能力を確認したほうがよい」と判断した場合には日本語能力テストが実施されることとなり、申請の受付時点や面接時点だけではなく、事前相談の時点で実施されることもあります。

特別永住者以外の在留資格の方で多いのは、会話能力は問題ないが、読み書きの能力が不十分ということが事例としては多く見られます。

日本語能力に不安があるような場合は、漢字ドリルなどで練習しておくのも必要だと思います。

各種許認可申請について

帰化申請以外のその他の許認可申請についてお調べの方は、ひかり行政書士法人の総合サイト「許認可.net」もぜひご覧ください。

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